白と黒そして色彩

今振り返ると彼にはその素質があったように思える。私と彼は高校時代1年間クラスが同じという繋がりしかなく、このまま凡百のクラスメイトと同じように他人になっていくように思えた。しかし共通の友人を通して再び繋がることになった。

 

彼が絵を描いていることを知ったのはちょうどその頃だった。依頼を受けたりもしているらしい。多くの人がただ時間を過ごすなか彼は自分の新しい側面を磨き上げていた。彼にとっては特別難しいことではないのかもしれない。絵が描きたいから、上手くなりたいから描く、そんなシンプルなものかもしれない。しかしそれを実行する難しさを私は知っている。何かを新しく始めるにもそれを継続するにも小さくない意思力が必要であり、誰にでも出来ることではない。

 

彼の強い意思を持った内面を私はまだ理解しきれていないだろう。しかし彼の描く絵を通してその内面を窺い知ることができるかも知れない。紙上の線と点そしてその色彩は彼の内側から創り出されているのだから。f:id:Argonautae:20200411181116j:image